Nas【illmatic】
アメリカのラッパー、Nas(ナズ)のデビューアルバム、illmatic
「ヒップホップ史上最高傑作!」
「全曲クラシック!」
日本のヒットチャートでもヒップホップがエントリーしていたあの頃、とりあえず洋楽のヒップホップってどんなのがあるのか?と興味を持った中で出会ったのが、上のような煽り文句を冠するこのアルバムだったんですよね。
で、聴いてみて、感じたこと
・・・え?これが??
単調なフレーズが淡々と繰り返されるトラック。
音の上をこれまた淡々とラップしていくNas。
リップスライムとか、キックザカンクルーみたいな華やかで楽しいラップからヒップホップに入った自分にとって、このアルバムはまるで理解できないものだった。
それから結構時が経ち、自分の中で音楽の幅がさらに広がっていっていた頃、何故か気になったんですよね。illmaticのジャケットの少年が。
で、もう一度このアルバムを聴いてみると・・・
あのとき単調に感じていたトラックは、最高のトラックメイカーたちが無駄を削ぎ、練りに練られた作られた最高級品だと感じられ
退屈に感じたNasのラップも、水墨画か枯山水のように虚飾を排し、ただただ本質だけを伝えようとする、いわゆる「リアル」なラップであることに気付かされた。
(なお、このときの彼はまだティーンエイジャーだったとのこと。マジか)
そうか、あの時は自分にillmaticを理解するだけの何か足りなかったのか。
そして面白いのは、このアルバムを少し理解できるようになってから、自分の音楽の幅が(ヒップホップに限らず)グッと広がっていった実感が得られるようになったこと。
illmaticはリリックのシビアさや、押韻の巧みさとかがクローズアップされることも多く、英語の理解力が平均的日本人レベルかそれ以下しかない自分が理解した!などと言うのはおこがましい。
でも、このアルバムから感じる殺風景な光景や、ストリートのリアルとかいうやつや、そこに反して広がる豊かな音楽的魅力は、ヒップホップ史上最高傑作という謳い文句を十分に感じ取れるものだと思っています。
・・・今でも理解できない音楽は山のようにある。でも、名作、名盤と言われるものには十分な理由があるし、それを理解できたとき、もっと豊かな世界が広がっている。
自分は別にヒップホップの大ファン、というわけではないけど、Nasのillmaticは音楽の楽しさや奥深さを語るうえでは、外せないアルバムなんです。